選手インタビュー

荒川静香さん 荒川静香さん フィギュアスケート 2006年トリノ

【最後に心から笑える戦いを期待】

元川:そういう意味ではバンクーバーに出る選手にはすごく期待もあるでしょうし、続けて結果も出してほしいという気持ちもあると思うんですけど、バンクーバーオリンピックへの期待はいかがですか。

荒川:そうですね、フィギュアスケートにかかわらず、今は実力を高いものを持っている選手たちがそろっていると思うので、その人たちが最後に本当に心から笑えるような出来であれば、結果というのはおのずとついてくると思うので、まずは自分の満足感が得られるような演技や戦いに期待しています。

元川:自分のことを一番知ってる人が勝つと言っていましたが、やっぱりそうですか。

荒川:そうですね。メダル獲得と公言して自分を奮い立たせる選手もいれば、メダルを考えれば力んでしまってうまくいかない選手もいると思います。自分を知っていないと、どんどん緊張の悪循環に置いてしまったり。逆に自分自身を知ることで、そのパターンにはめてしまえばいくらでもいい方向に進んでいくと思いますので、まず自分を知ることからスタートするんだと思います。

元川:前回のときも安藤美姫さんもそういうマイナスな方に行っていたのかなと思いますけど、メンタルがすごく強くなったという感想も書かれていましたね。

荒川:初めてのオリンピックでしたし、自分をコントロールすることであるとか、オリンピックの目に見えない力というものを経験したのではないでしょうか。それはメディアから受けるものであったり、やはりちょっとしたことに自分が気持ちがゆれ動いてしまうような年代にあったからこそ、うまくいかなかったのかもしれません。今はすべてを自分でコントロールできるような経験を積んで準備ができるオリンピックだと思いますので、だからこそ期待が持てるのかなと思います。

元川:浅田さんと鈴木さんに関してはいかがですか。

荒川:初めて迎えるオリンピックということで、オリンピックの魔物に捕まらないようにではないですが、知らなければ知らないで進んでしまったほうが強みになることもあるので、あまり気負わずにしっかりと自分の持っているものを出せればいい結果は見えてくるのかなと思います。

元川:最後に、荒川さんにとってオリンピックというものはどんなものですか。

荒川:そうですね。やはり人を、多くの人を成長させますよね。見る人々もそうですし、もちろん参加している選手たち、それに携わった人々、たくさんの人々の心を動かす影響力のあるイベントだと思います。また、頑張っている選手を見て普段の生活に活力を与えられる、そういう影響力というのが大きいと思います。普段スポーツを見ない方でもテレビをつけて放送されていれば、もしかして何か興味を持つきっかけになるかもしれない。何かきっかけの詰まっているものでもあると思うので、たくさんの人がいろんな場所でさまざまなきっかけをつかんでもらえればいいなと思います。

元川:バンクーバーの後の女子フィギュア界というのはどんなふうになりそうですか。

荒川:今の選手たちがこのまままだ引っ張っていける年代であるので、しばらく引っ張っていって、また下の世代の選手たちが交代できるぐらいのレベルに来るまで頑張ってフィギュア界を盛り上げていってほしいですね。

元川:ただ毎回コンスタントに選手が出てくるという訳ではない。

荒川:女子は特に、身体の成長とともにまずそこで一つの壁を迎えますので、いかにその壁を乗り越えられる選手たちが残っていられるか。あとは自分の力で乗り越えていかなければいけない。乗り越えた先ではまた一つ大きく成長できるのだと思います。家族のサポートも大切だと思いますし、フィギュアスケートは個人スポーツですが、他のスポーツと同様に沢山の方々の協力なしでは行えない。

元川:本当にストイックじゃないとできないでしょうね。

荒川:ストイックだと逆につぶれてしまう人もいるのかもしれません(苦笑)。

元川:練習時間も長そうですね、女子のフィギュアは。

荒川:やり過ぎて故障したら何も意味もないので、やはり、よく自分を知ること、あとは忍耐力のある人、うまくいかない時でもコツコツとやめずに続けていく。いつか、笑える日がくるまでやっていられることが大事だと思います。身体の成長とともに1回うまくいかなくなった時に私には才能がないんじゃないかと思って諦めてしまう人がたくさんいるので、そこを乗り越えてこられる選手が一人でも多くいるといいなと思います。

~荒川静香さん インタビュー 完~
(インタビュアー:ライター 元川悦子)
>>インタビュー写真集

ゲストプロフィール

荒川静香さん
荒川 静香(あらかわ しずか)
1981年12月29日生まれ。プリンスホテル所属。
東北高校1年で1998年長野五輪に出場し13位に入る。
2004年世界選手権で優勝し、2006年トリノ五輪で金メダルを獲得した。
現在はプロスケーターとして活躍する一方、解説者としてもフィギュアスケートの魅力を伝えている。
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