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- オリンピアンインタビュー
- 第19回 福井英郎さん
【オリンピックに近づくために】
安藤:競技初のオリンピアンということで注目される機会も多いとのことですが、オリンピック出場を目指している選手たちにアドバイスを送るとしたらどのようなことですか。
福井:オリンピックに出るという夢を持っている子たちには、自分が目指している種目のオリンピック選手に会ってもらいたいです。その夢を夢で終わらせないために、オリンピック選手に会って、いろいろな話を聞いてもらいたいなと思います。行ける、行けないではなくて、そうやって少しずつオリンピックという形を自分に引き付けていくすべを、日本人はあまり知らないのではないでしょうか。やはりオリンピックに行く人というのは、人とは違う何かを持っていたり、ものすごく長けているものがあったりするので、そういうものを若い選手やこれからの選手たちに吸収してもらいたいですね。オリンピック選手に会うことによって、その夢を近づけてもらいたいなと思います。
安藤:若い選手からすれば、一緒のレースに出るだけでも得るものは大きいだろうと思います。
福井:そうですね。大きいと思います。ただ、最近の若い子たちは、何かいまいちぱっとしないなというのが、個人的な感想です(笑)。レベルは上がってきていますが、オリンピック選手なんて手の届かないところの人たちなんだと感じてしまうのです。「この人だけには負けたくない」、「このオリンピック選手には負けたくない」という気持ちは、一緒にレースをしたりするとすごく感じます。「この選手は絶対にこれから"来る"だろうな」という、いわば体からあふれ出てくるパワーは、外から見ている人ももちろん感じると思うのですが、一緒に走っているとすごく感じたりするのです。
でも、今の若い選手たちには、そういうものがあまりないのかなと感じてしまったりします。僕もよく、もっと年上のオリンピアンのメダルを取った方たちからお話を聞いたりすると、いろいろな情報が今はあって、「あれがいい」、「あれが悪い」という情報をどこからでも取り入れられるわけです。あまり情報が多すぎて、一つのことに入っていけないということもよく聞きますが、みんなが、何が何でもオリンピックに行きたい、という夢一筋だけで来てもらいたいなと、若い人たちに対しては思います。
僕だけではなくて、オリンピックを経験する選手というのがこれから増えてくるわけで、そういう意味でも夢を与えられる選手たちが増えてくれば、もっともっとトライアスロンでオリンピックに行きたいという子たちが増えてくると思いますから、本当に楽しみです。男子だと、オリンピアンはまだ5人ぐらい、男女で合わせても10人いないですよね。ですから、もっともっと増えることによってレベルアップにつながっていってほしいと思います。
安藤:そうですね。今後もご自身のご活躍と、トライアスロン界の盛り上がりを期待しております。どうもありがとうございました。
ゲストプロフィール
- 福井 英郎(ふくい ひでお)
- 1977年9月25日神奈川県生まれ。シドニーオリンピック・トライアスロン競技において、日本人初のオリンピック出場を果たす。
現在は、コーチ業と自らの競技生活を両立させており、世界・日本国内の大会を飛び回っている。