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- オリンピアンインタビュー
- 第5回 横山謙三さん
【ワールドカップと現在の日本代表】
広報スタッフ:日本代表が3度目のワールドカップに出場するということで、まずは後輩である代表チームに、今大会の期待を一言いただければと思います。(注:インタビューは5月下旬に行ったものです)
横山:今の日本の大きな特徴は、簡単に言うとチームのコンビネーションみたいなものが素早い。サッカー界ではよく「アジリティ」という言い方をするんですが、日本のチームはそれを組み合わせたグループ戦術でいい面を持っていて、それが相手チームにとっては一番嫌なことだろうと思うんですね。次を考える前に先にボールが動いて、すぐ空いてるスペースを使われてしまうという。それが生かされれば、いいサッカーがやれるんじゃないかと今、期待しています。これは期待の部分です。ただ、そういうものは、持っててもゲームの中でうまく発揮できるかどうかというのがあるんですよね。日本は点が取れないと言われてきましたけど、あまりそういうことは気にしないで…もともと点を取るっていうのは一か八かなんですよ。だから、あまり報道を気にせず、自分たちの思い通りのサッカーをやるということが、いい成績にもつながると思いますね。僕が心配だなと思っているのは、日本人の今の体格からすると、相当、一つのボールに対するカバーができる態勢を取っていかないと守備の安定感を欠いてしまうことがあって、2002年の時はそういうアタック・カバーが非常にうまくいって成功したと思うんですが、今回はアタックするところとカバーするところ、特にアタックするところで負けてしまうとカバー、カバーにまわらなければいけないという…そうなると苦しい展開になるので、そのへんのところをチームとしてどう考えていくかが大きなポイントじゃないかなと思いますね。メンバーの使い方もひっくるめて…まあこれは我々が心配してもどうにもならないことだけれども、外から見てるとちょっとね…。
広報スタッフ:気になるところもいろいろとあるようですね。
横山:気になるというかむしろ、こういうふうにやってくれたら面白いなっていう…それは皆さんいろいろ思ってると思うんですけどね。でもそれは100人いれば100人、みんな違うわけで…それがサッカーの面白いところですね(笑)。
広報スタッフ:でもやはり、経験的には守りの方が気にはなりますか?
横山:自分が守りの選手だったから、やっぱり気になるところでね。それがしっかりできれば、今言ったように良さっていうのを持ってるチームなんで、それが生かされるんじゃないかなと思いますけどね。
広報スタッフ:日本のサッカーは結構そういう速さはあるということでしょうか?
横山:うん、素早さっていうのはね…例えば日本人の、くるっと回転する速さとか、1歩2歩の速さ…まあ、足が短いっていうのが利点なのかもわからないですけどね(笑)。そういう動作より、頭の中で次を発想する速さといいますか、そういうものは日本人ってすごく持ってると思うんですよ。ですからそれを生かさない手はないんでね、そこに一つのチームの強さを見い出していくっていう、それがこれからも日本のチームの課題として出てくると思うんですよね。良さを生かすという面でね。
広報スタッフ:ワールドカップは、日本は自国開催の大会を含め3度目の経験なんですけれども、横山さんは"出場する"ことが大変だった時代をご経験されてきました。ワールドカップというものはやはり、サッカー選手にとっては特別なものという思いはあるんでしょうか?
横山:そうですね、もうワールドカップは18回目ですかね、途中で戦争によって開催されない時期があったけれども1900年代の始めの頃からですよね。サッカーの歴史そのものが、ルールができたのが1848年が最初だと言われてますから、1世紀半ぐらいと古いスポーツです。サッカーが、ルールができて世界中に一気に伝わって発展したのはなんなのかっていうのは、やってみるとわかるんですよ。僕も初めてやった時、なんだかよくわからないけど面白いわけ。何が面白いのかっていうと、昔の指導者が良く言った言葉で「ボールは丸い」と。丸いっていうことは、可能性が無限であり、そういう面白さを持ってるということですよね。サッカーの魅力っていうのは、下手な人も上手い人も一緒になってやっても結構、楽しめるっていうね。で、われわれの頃は特にワールドカップを目指してという時代じゃなくて、オリンピックを目指してという時代でしたから、ワールドカップっていうものの魅力っていうのは別の世界だなあと、まだその頃は思ってましたね。アジアから1カ国しか出れないっていう時代でしたし。