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- オリンピアンインタビュー
- 第29回 久保英恵さん
昨年のソチ冬季オリンピックに四大会ぶりに出場した女子アイスホッケーチーム。過去二大会予選では惜敗に泣いた。日本代表に復帰した久保の活躍が光りソチ出場を果たす。大会では八位。日本のポイントゲッターであり「氷上のスナイパー」の異名を持つ一方、「スマイルジャパン」の主力としての慌てず焦らずポジティブシンキングの所作には風格も漂う。立春も過ぎた雪降る日、以前ここで仕事をしていたんですよとの東伏見のダイドードリンコアイスアリーナでお話を伺いました。
小さい時に始めたアイスホッケーですが、中学一年では女子社会人の岩倉ペリグリンというクラブチームに入りました。そのチームの監督にアイスホッケーとは何かを初めてきちんと教えていただいたように思います。ただパックをゴールに運べばいいと考えていた子供のアイスホッケーを、システマティックにチームプレーとして組立てる大人のそれへと引き上げてもらいました。
その監督とは長野オリンピック女子チーム監督の板橋亨(当時五十一歳)さんです。アイスホッケーに対する研究熱心さが凄くて、メンバーには一人ひとりここを伸ばせ、ここを直せと細かに指導する一方、次の対戦相手の攻略法はこうするとか、丁寧に指示を出されていました。夜七時半に始まる一時間半の練習でしたが、三分の一に当たる三十分位が監督の注意や話で占められることもよくありました。練習メニューにしてもきちんと丁寧に説明し、さらにその後個別に指導するという感じでした。プレー中でも躊躇なく止めて、ここはこうしなくちゃダメだと、タイムリーに指導されていました。
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練習中の声が出てないとか、システムのコミュニケーションの声が出てないとかでも怒られました。「モロシカリヤリヨ(もっとしっかりやれよ)」と注意しておられるのですが、言葉が口内にこもりモゴモゴ言っている感じで、ちょっと聞き取りにくい時もある、独特の口調でした。練習後には監督の口癖のマネをしたりしました(笑)。監督、すみません(笑)。最後にお会いしたのは二、三年前です。今も苫小牧におられると思います。