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- オリンピアンインタビュー
- 第19回 福井英郎さん
【高校時代含めた7年間が後押し】
安藤大輔(以下、安藤):実際にトライアスロンを始められたきっかけは何だったのでしょうか。
福井英郎(以下、福井):始めるきっかけは雑誌ですね。「トライアスロンジャパン」という雑誌を本屋さんで見て、「ああ、これは格好いいな」と思って始めたのがきっかけです。
小学校2~3年生ぐらいのときに、通っていたスイミングスクールでチャレンジしてみようということになり、一度トライアスロンの大会に参加したことがありましたが、トライアスロンを知っていてその雑誌に出会ったとか、探していたとかではなくて、偶然本屋にあったものを手に取ったのです。
その中に「4年後のオリンピックを目指す選手募集」というクラブチームの記事があったんです。そこにすぐ連絡して(笑)。まず父親に相談したのですが、「ちょっとこれを見てほしい」と言ったら、「やってみろよ」と言われて、「分かった」とクラブチームへすぐ電話しました。
安藤:ご出身の武相高校は、野球やサッカーなどスポーツ競技が盛んなイメージがあるのですが、やはりスポーツに対する興味、関心は高校時代の環境で培われていたのでしょうか。
福井:そうですね。当時は競泳でオリンピックに出たいという夢を持っていました。そうでなくても、やはり高校を卒業しても何かスポーツに携わっていきたいなという思いはありました。
安藤:高校時代まで取り組んでいた競泳からトライアスロンにチャレンジするにあたって、不安はありませんでしたか。
福井:高校の水泳部がものすごく厳しい部で、夏は屋外プールで練習して、冬は陸上トレーニングでほとんど走らされていました。走るのも苦手ではなくて、どちらかというと好きで、みんなより速く走れていたから、すごく楽しかったんです。だから、そういう意味では今振り返ってみると、トライアスロンのためのベース練習というか、高校3年間はそういうものに近かったのかなと自分では分析しています。
安藤:トライアスロンへの素養が培われていたということでしょうか。
福井:はい。もちろん、当時はそんなことは気付かないですよ。水泳が速くなるために一生懸命やっていましたが、でも、実際トライアスロンを始めてこうやってずっと伸びてきて、振り返ると、その3年間ってすごく大きかったなと思います。
安藤:1996年にトライアスロンを始めて、すぐ日本選手権で3位になられて、4年後にはオリンピックに出場されたということですが、やはりその辺りのトレーニング経験が力になっていて、すぐに発揮できたということでしょうか。
福井:そうですね。ゼロから始めての4年間ではなかった。高校時代の3年間も、トライアスロンを始めてからオリンピックに向かう4年間にプラスされるものだと思うので、合計7年間と考えてもいいのかなというくらいで。ただ、自転車だけは…競技用の自転車は知らなくて、通学する駅まで自転車をこぐことしかなかった。それでも、まったく乗らなかったよりはよかったのかなとは思います。
安藤:出場されたシドニーからオリンピック種目になるということは、トライアスロンを始められるときにはもうご存じだったのですか。
福井:いや、雑誌を見たときに知りました。ちょうど決定した年で、次のオリンピックからトライアスロンが正式種目になったというのが発表されて、雑誌でもオリンピック選手を育てるにはどうしたらいいのかとか、いろいろなものを特集するようになってきたころだったと思います。
安藤:オリンピック種目になるということも、転向の大きな要因でしたか。
福井:そうですね。オリンピック選手募集というところにぱっと目が行って、そこに引き込まれたというか。本当に最初だったから、愛好者は多かったけれどクラブチームも少なかったですし、やっぱりトップ選手が少なくて、外から集めようという動きがありました。
安藤:外から集めるということになりますと、トライアスロンの3種目の中で、やはり競泳から転向する人が比較的多いのですか。
福井:泳ぎって、小さいころから水の中で泳ぐという感覚を身に付けていないと、ある程度大人になって体が出来上がってから習っても、なかなかできないです。陸上競技に専念してやってきた選手たちを連れてきても、もう体が出来上がっていますよね。絞り込んでガリガリの体をしているので、水の中で浮かないんです。ですから、そういう3種目のバランスというのがすごく大切だと思います。僕らが始めた約15年前の当時は、競泳上がりの選手たちが多かったですね。そこから、どれだけ走れるようになるかという感じでした。
安藤:その傾向は、今も変わりませんか。
福井:いえ。僕らの世代は競泳を一生懸命やってきて、高校生ぐらいでトライアスロンを初めて知って、それから3種目始めましたが、今の子たちはそうではなくて、小学生ぐらいで「トライアスロンでオリンピックに行きたい」とか、「オリンピックに行かせたい」という親たちが教えてきて育っているので、トライアスロンからスタートした、3種目ともバランス良く練習をやってきている子たちです。ですから、やはりそこは違います。