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- オリンピアンインタビュー
- 第1回 冨田洋之さん
【オリンピックの意味】
高橋:オリンピックに出たことは、冨田さんにとってどういう意味がありますか?
冨田:4年に1度の大会で、みんなが目指すところで自分が演技して、ま、いい演技ができたんで、すごい大切なものになりました。
高橋:オリンピックって冨田さんにとって何?って聞かれたら、例えばオリンピックとは○○である、その○○を埋めよって言われたら、何て書きますか?
冨田:オリンピックに出る前はそんなに考えてなかったので、世界選手権、世界的な大会だっていう風な感じで思っていたんですけど。オリンピックに出て、その違いにすごいビックリして。でも何かって言われるとちょっと分からないですけど。
高橋:ビックリした違いっていうのを、もう一度分かりやすく言ってもらえます?
冨田:その、各国選手の意気込みだとか、やっぱり違いがすごい。観客の見る目っていうのも全然変わってきますね。
高橋:では冨田さんにとってトップアスリートであるということと、オリンピアンであるということの2つの間に違いはありますか。
冨田:自分自身には、あまりトップアスリートとかオリンピアンっていう考えは持たずに。単純にいい演技を皆さんに見せたいっていう気持ちを持っていますけども。
阿部篤志:今ちょっとおっしゃっていた、その自分の良い演技を誰かに見てもらいたいという気持ちと、その自分で完成させた技をやり遂げた時の自分の中の、この感動というか、そういう部分のウェイトとはどっちが大きいですか。(日本オリンピアンズ協会)
冨田:演技。演技を完璧にやる方が大きいですかね。それは、まあ、自分も納得する演技で、周りが見ててもやっぱり納得してもらえるような演技だと思うんで。
阿部:じゃあ、自分が突き詰めた演技が完成されたら、その結果として周りの人が見ても非常に感動してもらえるような演技であると。
冨田:共感してもらえたらなと思います。
高橋:周りの人っていうのはどういう人を想定してますか?
冨田:試合を見に来てもらえる人たち。
高橋:普通の、私みたいな普通の一般人?一般の観客?
冨田:はい。体操は見てもらうスポーツなんで。どんな人にも認められるような。
高橋:じゃ、専門的な人だけじゃなくて体操のことを何も知らない一般の人にも。
冨田:はい。
高橋:それにはそれだけ完成度の高いものを自分の中で築き上げていかないといけないというのがあるんでしょうね。
冨田:そうです。やっぱり体操をあまり知らない人に感動を与える方が難しいんで。体操をやっている詳しい人よりかは。
美しさとは
高橋:私は冨田さんの演技を見て、単純に本当に綺麗だなと思って感動してしまいましたけれど、冨田さんにとって美しさってどういうイメージですか。
冨田:無駄が無い、と、あと、見ている人に簡単そうだとか、自分も出来るんじゃないかと思わせるような技。うん、そうですね、難しいことを簡単に見せるような「こなし方」ができればいいなと思っているんです。
高橋:高校生のときに見たシェルボ選手のイメージはありますか?ご自分の中にまだ。
冨田:その頃から自分がやりたい体操はシェルボ選手の体操だなとは。そんな感じで今までやってきてますんで。
高橋:もう乗り越えたとか思いませんか?
冨田:いや、全然思ってないです。
高橋:まだ追いついてないと思います?
冨田:はい。技自身の種類というのはやっぱり昔と今とでは大分変わっているんですけど。やっぱりその一連の流れだとかっていうのは一緒なんで、それを如何に完成させるかは、やっぱりまだまだ出来てないですね。
これからの夢
高橋:これからのことを少しお伺いしたいんですけど。今の目標はなんですか。
冨田:ルールが変わって初めての試合がもうすぐあるんで、とりあえずそれに合わせていくことと、後はまだまだ追い求めているものが先なんで、それに向けて一つひとつ。一試合、一試合大切にしていこうというのがあります。
高橋:追い求めているというのは技ですか。
冨田:技。間。美しさ。
鈴木:その美しさっていうのは、どこにゴールがあるんですかね。具体的にこれはっていうのはあるんですか。
冨田:そうですね。演技。一つひとつの技がいくつかあって、一つの演技になるんですけど。それはまだ、何か分かれている感じがするんで、それら全部が一つになるとやっぱり全然変わってくると思います。
鈴木:それを自分なりにイメージして、これが最高だっていうのを自分でイメージ作るんですか。
冨田:そうですね。
高橋:何かCGでこれが合理的な無駄の無い動きだとか、そういうシミュレーションは?
冨田:あんまりしないです。イメージにあるだけです。
高橋:北京オリンピックももちろん目指しますよね。
冨田:そうですね。はい。
高橋:そうすると当面の目標というのは北京なのかな?
冨田:大きな目標としては北京に置いてはいますけど。まだ先のことなんで、とりあえず目先の目標をしっかりクリアしていけたら、自然と北京に繋がっていくかと思うんです。
高橋:北京でも「かなり先のこと」と言われてしまうと、その先のことを聞くのは申し訳ないんですけど。将来、競技者を終えた後にこんなふうに生きていきたいというのがあれば教えてください。
冨田:漠然として、やっぱり、ずっと体操一筋で来たんで、その経験をなるべく生かしたいと。指導者の方向を目指してやっていきたいなとは思っています。