選手インタビュー

竹下百合子さん 竹下百合子さん カヌー・スラローム 2008年北京

【カヌーの魅力と海外との環境の違い】

元川:カヌーをずっと子供のころからやってきて、魅力というか楽しみは何ですか。

竹下:楽しいだけではなくてつらいことも結構あったりするのですが、自然の中で練習しているので、たまにただ浮いているだけでぼーっとすることもあったりして、そういうのはすごく気持ちいいし、そこからしか見られない景色というものもあります。自分でも思うのですが、この競技はすごく難しいです。奥が深いというか、決まりがないしどんどん進化していくので。自分で考えて通り方を変えたりしますが、試合自体も毎回違うゲートセットなのでそういうものは面白いし、本当にパーフェクトなレースは一生できない。

元川:今までで一番パーフェクトに近かったのは、オリンピックの準決勝ですか。

竹下:準決勝ですね。それでも後で見返すと、ここはこうした方がよかったなということがいっぱいあるので、完璧な試合はないです。

元川:やはり記録だけではないですね。

竹下:そうですね。基準がないので。

元川:確かに。そうなると、タイムも含めて、自分の中に何かこれだと思うものが得られなければ理想と言えませんものね。それを探し続ける旅なのですね、カヌー人生は(笑)。

竹下:はい。

元川:そのレースの順位は、そのレースのほかの人の状況にもよりますよね。

竹下:ゴールするまで分からないです。

元川:すごく強いと言われている人が確実に優勝するわけではないというのも、面白いですよね。でも、少しずつ実力は上がっている実感は自分の中でありますか。

竹下:前回よりはというか、そうであってほしい。

元川:日本の女子のレベルはどうなのですか。

竹下:世界でいうと、上にはいないですね。中間ぐらいで、上を狙える位置にはいると思います。

元川:それは指導者の人が少ないということもあるのですか。

竹下:指導者は今一人です。去年から正式に日本代表に初めてコーチがつきました。それまではいなかったので、個人というか、何人かで海外に行った時だけコーチを探して雇っていました。

元川:本当ですか。では、体系的な指導はないわけですか。

竹下:そうでした。去年ぐらいからコーチがついて、年間のスケジュールなども全部決まってきました。

元川:そういう意味ではまだまだ発展途上な競技ですね。このコーチの人は外人さん?

竹下:スロバキア人です。今も海外にいるので、指導を受けるのは海外に行った時だけになってしまうのですが。

元川:海外の強豪国は当然指導者がちゃんといるのですね。

竹下:各クラブに何人かいます。フランスはJリーグみたいにリーグになっています。

元川:では、クラブ対抗で試合するようなことも?

竹下:そういうものもあるみたいです。クラブ対抗というか、出られるレースも決まっているみたいです。

元川:試合数が違いますね。

竹下:もう全然違います。ヨーロッパだったらいろんな国から選手が集まるので、そういうところでトップ選手と合わせられるのがすごくいいですよね。

元川:まず環境が違いすぎる。指導者がいないというのはびっくりしました。カヌーの道具をそろえるのも結構お金が掛かりそうですよね。

竹下:お金が掛かりますね。レンタルもできるのですが。

元川:もちろんマイパドルなどは全部持っているのですよね。

竹下:はい、あります。ボートは1艇なのですが、パドルは2本です。

元川:海外などもそれを持って試合に行くわけですよね。

竹下:はい、全部飛行機に乗せていきますが、時々壊れていたりするんです。去年も着いて開けたら穴が開いていたし、1回は先端が曲がっていました。

元川:それはどうするのですか、補修するのですか。

竹下:向こうに行って直します。自分でできない場合はカヌーの会社にお願いしたりもするのですが。

元川:今はそういう会社が提供してくれるのですか。

竹下:いえ、海外にしかないので。全部チェコからの輸入です。競技用品も全部海外のものを使っています。

元川:そうなんですね。では全部自分で運んで、遠征の時も自分で練習するんですか。

竹下:遠征に行く時は代表チームで行くのですが、選手同士で運転します。本当に最近良くなって、連盟がやってくれるようになりました。それまでは宿なども全部自分で予約しました。みんなで行って、現地に着いてからホテルを探したり、歩き回って探したり、安いレンタカーを借りて。安いホテルを探したりします。今思うとよくあんな危ないところに泊まっていたなというところがありますよ。

元川:そういう意味でたくましくなりますね。カヌーを通じて人間的にも成長できたというのはあるのですか。

竹下:そういうのはあったと思います。

元川:これはやはり、環境をもう少しよくするべきというのはありますね。次のオリンピックでメダルを狙っていく競技でもあるわけですから。

竹下:でも、こういう環境でしかできないので、この環境を工夫してやるしかない。でも、それで勝てればうれしいではないですか。

元川:そうですね。そういう意味では、竹下さんの背中に掛かっているのが多いですね。でも、海外遠征はコンディションを整えるのも大変ですね。

竹下:そうです。でも、そういうものも含めて結構楽しんでいます。

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