選手インタビュー

>結城昭二さん 結城昭二,バスケットボール,1976年モントリオール

【オリンピック出場のためのアジアの壁】

元川:それでアジア予選がオリンピックの前の年にあったわけですよね。1975年で、結城さんは25歳でしたね。

結城:そうです、タイのバンコクでありました。

元川:この時は、日本は優勝したのですか。

結城:いや、実は大きい声で言えないんですが…中国がまだIOCに加盟していなかったんですね。ですから、事実上のターゲットは韓国なんですよ、韓国とフィリピン。ですから、中国が出ていても僕らはターゲットにしていない、大げさに言えば負けてもいいと思っていましたから。それで実際、韓国に勝ったんですね。韓国に勝つということは、イコール優勝と一緒ですね。オリンピック出場権を取れるということです。

元川:それで、オリンピックの出場権を得たわけですね。

結城:そう。中国はどうでもいいと思っていました。優勝は確か、中国だったと思うんですが…。

元川:でもオリンピックには出ない、ということですね。

結城:最初からそういうことですから、韓国も中国を相手にしていないし、日本も相手にしていない。つまり韓国と日本で勝ったほうがオリンピック代表という、そんな大会でしたね。アジアで優勝するとかしないとかっていうことはもう、全然考えていなかった。

元川:とにかく韓国に勝って出場権を取ろう、ということですね。

結城:そうです、それだけです。

元川:そういう試合で、例えばこの間のアジア大会をテレビで見ていましたが、ギリギリのところで韓国に負けました。でも、結城さんの時代は勝っていたということですよね。どういう競り合い、せめぎ合いがあったんですか。

結城:実はその時、ホテルから会場に行くバスが渋滞で全然動かないんですよ。それで、間に合わないということで、途中で降りて走ったんです。

元川:本当ですか。

結城:ええ。韓国戦ですよ、それ。降りて走りましてね。会場に入ったら3分前だったんです。

元川:本当ですか…でも、ある意味で良いアップになったんでしょうか。

結城:そうそう。そのままバスに乗っていたらアップができなかったんです。ちょうどウォーミングアップもできて、そのまま試合ですよ。最初からクロスゲームになりました。みんな、もうベンチにいる人も12人が全員でゲームをしている雰囲気でした。12人プラススタッフが一緒になってゲームのテンポに自分を合わせて、例えば交代してもすっと流れに入っていくっていう、本当にチーム一丸となって韓国と戦いました。

元川:でも、そうでないと勝てないですよね。日韓戦というのは常に、どの競技でもそうですがアドレナリンも出ますし、韓国は日本に負けたくないと向かって来る…その中でチームとしての一体感が最高にでき上がった試合だったわけですね。

結城:それはもう本当に、今まで僕のゲームの歴史の5本の指に入りますね。モチベーションもそうですし、フィジカルの部分が全然、日頃の大会とは違うなって自分で感じるし、武者震いはするし、試合中に震えてくるんです。こんな経験は、僕も図々しい方ですからほとんどなかったんですが。結局、1点か2点で勝ったんじゃないかと思います。

元川:今はいつもその逆のパターンで韓国に負けることが多いですが、当時はそういう精神力があったということですね。

結城:そうなんですよ。って、勝ったから言えますけれど。僕らはプレーヤーだから、時代とか環境、考え方は違うけれども、戦う一人の選手としては今も昔もほとんど変わらないと思います。ただ大きな違いは、やはりフィジカル面ではものすごく弱いですね。

元川:そうですか、今のほうが弱いと感じますか。

結城:ええ。僕らも、よく韓国と試合をやりましたが、試合のホイッスルが鳴った瞬間、韓国のプレーヤーが肘打ちしてくるんです。そうすると、オッと思うじゃないですか。それがまた来るんじゃないかと思っている間に、試合が終わっちゃうんですね。

元川:相手は恐怖心を植え付けようとして…。

結城:そうそう。それで、結局自分のプレーができないまま終わってしまう。今も多分そうだと思います。僕らは、やられたらやり返していました。ですから、韓国でゲームをやった時というのは、乱闘になったことありましたよ、日本と韓国が。

元川:私は普段サッカーを取材していますが、そういうことはすごく感じますね。韓国の選手のほうがすごく強かというか、そういうところで結局日本が競り負けるという長い歴史がありましたけれど、それと同じですね。

結城:ゴルフはやられますか? 例えば、ゴルフでショットの時に音がしたり誰かが動いたりすると、集中している神経がぱっと途切れてしまう。バスケットも集中してプレーしているところに肘打ちをされると、そっちばかり気になるんです。その選手が近くに来ると、またやられるんじゃないかと…そう思ってシュートしたりプレーしていたら、やはり成功はしなくなるんです。

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