選手インタビュー

大澤明美さんインタビュー

大澤明美さん 大澤明美さん カーリング 1998年長野

【選手と指導者、二つの道】

五味:バンクーバーのときもパラリンピックにすごくお歳のいった方が出ていて話題になっていたので、カーリングはいくつになってもできるのだなぁと感じました。

大澤:オリンピックや世界選手権といった最高峰の戦いの中にも40歳以上の人がたくさんいます。ただ、全員が40歳以上というチームはないですね。例えば、作戦を考え、プレッシャーのかかる場面で最後のストーンを投げるスキップには経験のある40代の選手。フィジカルの強さが重要なリード、セカンドには20代の選手。そしてその間をつなぐサードのポジションに30代の選手といったように、その年代ならではの特徴を組み合わせたチームが、最近少しずつ増えているようです。

五味:逆に、何歳からでもやろうと思えばやれるのかなという感じもします。

大澤:もちろん、趣味として楽しむカーリングは3歳くらいから80歳を超えてもできると思います。実際、カナダへ行くとお年寄りの方が本当に上手いんです。ゴルフもあまり年齢に関係なく上手な人がいますが、それと同じだと思ってもらえばわかりやすいかもしれません。逆に、石川遼選手のように、小学生の頃から大人顔負けの実力を持っている子どもたちも少なくないんですよ。

五味:大澤さんも、今もカーリングを続けているということですが、日本代表のレベルに対して未練というのはなかったんですか。

大澤:なかったとは言えませんね(笑)。それにここ数年、さっきも話したように40歳代の人が世界選手権やオリンピックでメダルを獲っているんです。もちろん、彼らは私と違ってずっと努力を続けてきているので、比べることすらおこがましいんですが、それでもテレビやインターネットで同年代の選手の活躍を見ると、自分ももしかして……、なんて思ったりします(笑)。まぁ、それは冗談なんですが、日本はカーリングだけでなく、結婚して競技者をやめる女性が多いですよね。そうした現状の中で、特にカーリングは年齢に関係なく力を発揮できる競技なので、誰かが続けることで新たなレールを敷くことができればいいなと、最近思うようになりました。それもあって、自分も趣味レベルであっても、プレーヤーとしてカーリングを続けていきたいし、同時に、指導者という立場でもカーリングに貢献していけたらいいですね。

五味:ご自身も楽しみながら、指導者としてその楽しさを伝えていく活動というのもやっているわけですね。

大澤:ジュニアの指導を始めて6年くらいになりますが、まだまだ指導者としては力不足なので、もっといろいろなことを学ばないといけないと思っています。その意味では、オリンピックに出られたということが、今とても役立っていますね。というのも、オリンピアン同士の交流会などで、ほかの競技の方々と指導についていろいろな話を聞かせていただいているんです。

五味:ユニバーシアードのコーチに行ったということもありますし、教えることについては勉強中ということですが、やはり高いレベルで競技をするというところの気持ちもあるわけですね。

大澤:そうですね、今の年齢に合った、長野のときとは違った戦い方もあるんじゃないかと考えることはあります。具体的に言えば、まず一つは作戦面ですね。バンクーバーオリンピックや今年の世界選手権をテレビで観ましたが、やはり全体的には20代の選手より30代、40代の選手のほうが効果的な作戦を立てていましたし。もう一つ、メンタル面もただ年齢を重ねたというだけでなく、長野オリンピックを経験したことで、今はだいぶ強くなっていると自分では感じています。
ただ体力的にはもう普通の女性と変わらないので、もし本気でオリンピックを目指すなら、以前と同じレベルに戻す必要はないと思いますが、最低限の筋力強化は必要でしょうね。

五味:それが面白い競技ですよね、体力だけでも勝てないでしょうし、ゲーム数をこなしてることによる経験という意味合いの大きさもあるような気がしますし。ではこの先、もしかしてまた日本代表として大澤さんの名前が出ることがあるかもしれないと…。

大澤:それは、どうでしょう(笑)。可能性がないわけではないですけど……。

五味:そういう立場の方に恐縮ではあるんですが、日本のカーリングのレベルは、長野以降、注目も集めるようになりつつ、期待されながら厳しい結果になっています。日本以上に世界のレベルが上がっているというような報道があったりして、実際のところ今の日本代表のレベルに対しては経験者として何か感じることはありますか。

大澤:たしかに日本のレベルも上がっているんですが、世界のレベルもそれ以上に上がっていますね。特に中国はこの10年で飛躍的に力をつけてきて、すでに世界選手権でメダルも獲っています。ただ、日本も技術面ではメダルに手が届くレベルの力を持っているので、その技術を100%出し切れるようになれば、一気に頂点に立ったとしても不思議ではないと思います。といっても、その100%出し切るというのがすごく難しいんです。コンディション調整とか、チームとしてのまとまりなんかもそうですし、試合でミスが出たあとの気持ちの切り替えとか、プレッシャーのかかる場面でのショット選択など、いわゆる「経験」という部分で、まだまだ伸びしろがあるんじゃないかなと思います。 「経験」というと、よく海外へ行って試合をして、という話になるんですが、私はむしろ、国内に日本代表を狙える実力を持ったチームが少なくとも5、6チームいて、その中で切磋琢磨し合える環境を作ることが一番重要なんじゃないかと思っています。
今は男女ともに、代表レベルと言えるのは1チームか2チームくらいしかなくて、それがそのまま強化指定AとBですから、いつまでたってもトップレベルとそれ以下の差が縮まらないんです。私はそういう部分も世界の壁を超えられない一つの原因だと思っているので、100%の力でぶつかり合えるライバルが増えて、国内でもギリギリの試合をもっとたくさん「経験」できるようになれば、いつメダルを獲ってもおかしくないと思っています。そのためにも、私を含めてオリンピックや世界選手権を経験した選手がさまざまな地域でチームを作って活躍すれば、それがカーリングの裾野を広げて、全体的なレベルアップに貢献できるんじゃないかと思っています。

五味:長野オリンピックの当時は選抜という形でしたが、今のオリンピック選手の決め方というのはチーム単位になっていますよね。

大澤:そうですね。長野のときだけはサッカーやバレーボールと同じように、各チームから優秀な選手を選んで、代表チームとして活動する選考方法でした。それ以降はずっとチーム単位です。サッカーで言えば、Jリーグの1チームがそのまま日本代表になるのと同じですね。カーリングの場合はその方法が世界でも一般的なんですが、だからといってそれが絶対にベストというわけでもありません。例えば、チーム青森に同県出身者が一人もいないように、他県から優秀な選手を集めるなど、地域単位でピックアップ方式に近いやり方で強いチーム作りをしているケースもありますので。

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