選手インタビュー

中村行成さん 中村行成さん 柔道 1996年アトランタ 2000年シドニー

【3兄弟同時のオリンピック出場を実現】

広報スタッフ:続けていくことで目標がだんだん上がっていったと思うのですけれども、オリンピックというものを意識し始めたのはいつ頃ですか。

佳央:オリンピックに選ばれる選考試合で勝たないと現実には出られないわけですから、実際にオリンピックに3人で出たいなと思ったのは…私と次男が1993年の世界選手権で優勝して、3人でオリンピックに出るとなると下の弟も実力が伴わないと出られないので、1996年がオリンピックでしたから、その前後の選考試合は前年の講道館杯と1~2月頃の国際大会、4月の福岡の体重別大会と三つくらいなのです。確か講道館杯は3人で優勝したよな。だから、その頃じゃないですかね、ひょっとしたらと思ったのは。海外の試合も調子がよくて、これは頑張ったら行けるぞと。実際は福岡で、弟たちが優勝して最後に私が優勝して決まったようなものだったのですが、弟2人が優勝して、最後に俺がこけるわけにはいかんだろうという緊張もありました。でも先に2人が決めてくれたので、気は楽でしたね。

広報スタッフ:やっぱり出るなら3人でという感じですか。

佳央:そうですね、兄弟2人というのは多いですが、3人で出るということは今までなかったと思うので。チームではなくて、各階級1人しか出られない競技で3人とも出られるというのは、かなり実力がないと達成できないので本当にうれしかったですね。階級が重なっていても一緒に出られないし、年齢が離れ過ぎていてもオリンピックは4年に1回なので出られないし、けがをしても出られないし、もちろん勝たないと出られないので、本当に運がよかったとしか言いようがないですね。

広報スタッフ:弟さんたちのほうはどうですか、オリンピックを意識するようになったのは。

行成:1993年の世界選手権に一緒に出て優勝して、その時はもう次はオリンピックだと思っていましたが、日本代表になった頃には意識していました。高校3年、大学1年くらいで次は世界選手権、オリンピックというのを。高校3年で世界ジュニアを勝って、その翌年ぐらいにフランス国際の今のシニアのトップクラスが出る試合で、これまた、まぐれかわからないけれども優勝したのです。そこで世界の力というものがわかったんです、「シニアのトップはこれぐらいのものだ。あとは国内で勝てば」という気持ちになった。国内で日本代表になれば、世界が取れそうだなという感覚はありましたね。

広報スタッフ:兼三さんはどうですか。オリンピックに対する意識は。

兼三:僕の場合は、1993年の世界選手権は代表になれなかったのです。小さい時から漠然と「3人でオリンピックに行こう」とは言っていたのですけれども、年が上がってきて「頑張れば行ける」という感じになってきたので、「3人で行こう」と意識するようになりました。1993年の世界選手権に出られなくて、次の1995年もまた負けたんです。その時に僕の階級で代表になって幕張で開催された世界選手権に出た秀島さんが世界チャンピオンになっていますので、その選手より成績が上でなければ次のオリンピックの代表になることはできないのです。僕から見て、兄2人はけっこう実力もあってオリンピックに手の届く位置で、間違いや変なことをしなければ行くだろうという状況だったのですが、僕の場合はその前年度の世界チャンピオンを超えなければというのがあったので厳しかったですね。だから、僕がオリンピックに出た時は、世界選手権やオリンピックを通して初めての大舞台でした。

佳央:1995年の世界選手権終了後に選ばれている試合は全部勝っているはずです。一つでも負けたらたぶん、オリンピックには行けなかっただろうから。

兼三:ユニバーシアードからずっと連勝でした。3人でのオリンピック出場を考えたら、その時しか、ほかには考えられなかったですからね。

広報スタッフ:ちょっと広い話になるのですが、柔道という競技の魅力はどういうところにあるか、それぞれお話しいただけますか。

佳央:私の場合は、やっぱり魅力というと礼儀の面。先輩と後輩の面もそうですし、教育という面もそうですし、そこをしっかり大事にしている柔道は素晴らしいなと思います。その中で、ルールがあるケンカといいますか、ルールを作って相手をぶち投げる快感ですか。自分は寝技も好きですし、締めや関節技もできるという、柔道というスポーツでしかできない荒々しいところが魅力です。あとは、柔道をやっている国が多いので、試合に行った時に友達になれる。今でも試合場で会ったライバル選手たちとは楽しく酒を飲んで、あまりしゃべれないですが片言で会話して、どこの国に行っても知り合いがいるみたいなところは魅力ですね。

行成:今、兄がほとんど言ったのですが、体も強くなるし、心も強くなります。それから、いろいろな国に行けることとか、いっぱいありますよ。それだけ行くと知り合いとか友達も増えるし。

兼三:やっぱり奥が深いというところが一番だと思いますが、体力とか体型によって、成長してくると自分が小さな頃にやっていた技もできなくなったり、逆に新しい技ができたり。それで、技の全部をできる人が強いかといったらそうでもないし、その技一つだけというスペシャリストが勝ったり。かといって、練習で強い選手が試合で勝つかというとそうでもないし。駆け引きがあったり、どんなに強かろうが、いろいろな要素がかみ合って最終的には試合での結果が出る。そういう意味で奥が深いというか、勉強になるところがたくさんあって、それが柔道だけではなくて人生や社会の中でもたくさん共通するところがあるので、柔道を通して学ぶことが多いというのが魅力なのかなと思います。

佳央:陸上みたいに特別に足が速ければ勝てるということではなく、いろいろな要素が組み合わさっている。だから、どういう性格であっても、どういう体力であっても、弱くても、体力がなくても、テクニックでカバーできるところもありますし、気が短い選手、気が長い選手、すべての人に合うといいますか。いろいろなスポーツがありますが、そういう面で柔道はすごいスポーツなのではないかなと思います。

兼三:3人の特徴、それぞれタイプが違いますので、小さい時からそれを見てきて、自分にないものを兄2人が持っていたり、その逆もあります。3人で試合に出て、自分だけ負けて、兄2人が優勝しても自分のことのようにうれしかったり、その逆に自分だけが勝って兄2人が負けたりすると、負けた時の悔しさを自分のことのように体験できますので。1人であれば勝った時に「ああ、よかったな」で終わってしまうのでしょうけれど、自分だけが勝っても「また次に3人で勝てるまで頑張らないとな」という前提がありましたので、それぞれ頑張ってこれたのではないかと思います。

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